貸会議室 横浜の実績
複数回答による要綱の効果について、これら自治体は、「狭小宅地・住宅の開発防止など、生活環境の向上に効果をあげている」が六二・八%、「無秩序な市街化が防止できた」が五八・二%、「良好な市街地の整備ができた」が三五・一%、「事業者の負担金などがなければ、関連公共施設の整備は困難だった」が二七・三%、「要綱などによる指導がなくても、良好な市街地整備という点ではあまり変わりがない」が五・五%という回答をよせた。
つまり、要綱は全体としてみれば大きな摩擦もなく、しかも大きな効果をあげていたわけで、保革を問わず自治体の独自の役割が浮き彫りになった。
調査は、当初の目的とは逆に、要綱の重要性を強調するという皮肉な結果となった。
中曽根内閣や財界の規制緩和やアーバン・ルネッサンスの大合唱を受けて、いや公然と聞こえる前から、建設省は要綱退治に乗り出した。
それも国会の審議を必要としない「通達」によって、つまり市民の目に触れにくい闇のなかでおこなわれた。
通達とは何か。
国家行政組織法第十四条二項はいう。
「大臣、委員会及び庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又あて)局長から知事へという、いわば機関から機関にだされた前記の通達と同時に出されたものだが、民間宅地指導室長から担当部長へという実務レベルになっている。
局長通達が概論なら、こちらはより実務的な内容になっている。
「開発行為に関係する者との調整に際しての関係者は通達を発することができる」。
つまり、上級行政機関が、命令権、指揮権にもとづいて、下級機関に発する構造になっている。
要綱に向けられた通達という弾丸を具体的にみていこう。
佃「開発許可に関する事務等の迅速な処理について」(一九八二年七月十六日、建設省都市計画局長から都道府県知事あて)この通達は「必要合理的な範囲をこえる手続きの遅延は、いたずらに民間活力を減退させ、広く国民一般から求められている円滑な宅地供給を阻害しているとの批判を招いている」とし、「審査手続きの定型化、標準事務処理期間の設定、市町村における協議・指導行政との同時並行的処理」などをおこなうことを求めている。
「開発許可に関する事務等の迅速な処理について」(一九八二年七月十六日、建設省計画局宅地開発課民間宅地指導室長から都道府県開発許可担当部長、指定都市開発許可担当局長側における要求又は対応が社会通念に照らし妥当性を欠くと認められる場合にあっては、その協議の経過等を踏まえ、引き続き工事着手までにその調整に努めることを前提として手続きを進める等の措置を講ずること」と指示している。
自治体や住民側の要求より、事業者側の工事着手のスケジュールを重視せよというのである、何とも業者寄りの通達である。
「開発許可に関する事務等の迅速な処理について」(一九八二年九月三日、建設省計画局宅地開発課民間宅地指導室長から都道府県開発許可担当部長、指定都市開発許可担当局長前記の二つの通達をより詳しく、具体的にした駄目押し版ともいえるものだが、それにしても同じテーマで矢継ぎ早の通達行政である。
「標準事務処理期間」について、「ほとんどの事案について一’三月の内に処理が完了している実績にかんがみ、少なくともこれらの実績をこえない範囲で事務処理が完結し得るものとなることを前提とし、さらに可能な限り迅速化が図られるよう適切に設定すること」と強調し、具体的に期間を切っている。
この通達は、建設省がいかに開発許可の迅速化に熱心だったかを物語っている。
強まる攻撃建設省による要綱攻撃はまだ序の口だったのである。
同省の標的は「時間」から「内容」に移っていった。
ふたたび、具体的な通達を追ってみよう。
「宅地開発指導要綱等の運用について」(一九八二年十月二十七日、建設省計画局長、自治大臣官一房長から都道府県知事、指定都市市長あて)この通達は一九八二年十月二十七日付けの建設省計画局宅地開発課民間宅地指導室長・自治大臣官一房地域政策課長通知「宅地開発指導要綱等に関する調査結果について」という自治省を巻き込んだ調査を引用しながら、「開発協議に要する期間」や「関連公共公益施設の整備等の水準」、事業者から自治体にたいする「寄付金」について事業者に有利なように「改善」を指示するものだった。
「宅地開発等指導要綱に関する措置方針について」(一九八三年八月二日、建設事務次官から都道府県知事、政令指定都市市長あて)この通達は前記の「運用について」の通達を具体的に、詳細にしたもので、自治体の指導要綱行政に全面的な攻撃を加える内容になっている。
この通達でまず注目されるのは、一九八二年十一月末に発足した中曽根政権の意向を十分に反映していることだ。
また、通達の主体が従来の建設省計画局長から事務次官に格上げされており、その権威によって自治体に宅地開発要綱の「是正」をあからさまに求めたことも注目される。
「是正」を求める理由として、この通達は「近年における所得水準向上の鈍化、宅地造成コストの上昇等の経済情勢の変化の下で、良質かつ低廉な住宅・宅地の供給に対する国民の欲求に的確に応えていくためには、宅地開発等指導要綱及びこれに基づく行政指導のあり方について、この際行き過ぎの是正を図るための基本的な見直しの努力が強く要請されている」と述べている。
「貴職におかれても、この趣旨を了知され、管下市町村に対してもその旨周知徹底を図られるとともに……速やかに是正が図られるよう特段の配慮をお願いする」と力説している。
ここには国と自治体の有無を言わせぬ上下関係が明確に示されている。
この「宅地開発等指導要綱に関する措置方針について」という次官通達は、自治体が工夫して要綱に盛り込んだほとんどすべての事項に「是正」を求めるものだった。
たとえば、宅地開発に関する技術的指導について、共通事項、道路、公園・緑地等、治水・排水施設、画地・公益施設、その他の関連事項、とある。
さらに、自治体による中高層建築物に関する指導や事業者にたいする寄付金の要請にまで広範囲におよんでいる。
ここでは、具体的な内容として二つとりあげてみる。
宅地開発指導要綱が、その裏付けとして種の罰則あるいは制裁措置を定めていることはすでにみた。
これについて通達は「指導要綱による指導内容について、意見の不一致が生じた場合であっても、都道府県への進達拒否、水道、電気、ガス等の供給についての協力拒否その他の制裁措置をとることには問題がある」と、やむにやまれぬ自治体側の論理を無視して、決めつけている。
また、宅地・住宅開発について事前協議などのシステムを通じて住民の協議参加、あるいは住民の同意を求める要綱があることもすでにみた。
この問題について、通達は「中高層建築物の建築に際して、周辺住民との調整を求めているのは、日照等に関して周辺住民との紛争を未然に防止させる趣旨と考えられるが、この場合にあっても、建築計画の内容の事前公開、問題が生ずるおそれのある場合における話し合い等を求めることは格別、周辺住民の同意書の提出まで求めることは、建築行為を遅延させるなど建築主の権利の行使を制限することとなるおそれもあり、適切でないと考える」と言い切っているのである。
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